鉛の風船

ロックです ジャズです ぼんくらなおっさんです

生きてこそ

今日は、退院後初めての検診でした。
初回だけ早いみたい。

 

そうしたら衝撃の出会いが。

 

私は5月にがんが見つかり、つい先日まで入院していたのですが、入院して数日経ったころ、同部屋のある患者さんが早朝に急変しそのまま戻ってこなかった、といった出来事がありました。
荷物が整理され、ベッドは空に。

これはもうそのまま亡くなってしまったとしか思えません。
そう思い込んでいました。

ところが、今日、その亡くなったと思っていた本人にロビーでばったり。
幽霊でも見るような目で凝視していると、こちらに気付き挨拶しながら近付いてきました。
話を聞くと、一時は危なかったものの、何とか持ちこたえ、彼曰く、

『また生かされてしまった』

そうです。

 

“また” 、 “生かされてしまった” 、う~ん、、、。

 

その方は、見た感じ60を超えた位なのですが、入院中に奥さんから、ここ4~5年はがんの再発や転移で入退院を繰り返し、今度こそダメか、といった状況に何度も陥っている、と聞かされていました。

少しだけ話しをし、

『もういいんだけどな』

と言い残し、病室に戻って行きました。

 

その方の事情や苦悩は知るべくもありませんし、同じ状況に陥ったら私の考えも変化するのかもしれません。
でも私は、どんなに苦しくとも、生きたい。
私が寝たきりになったりして、両親等に迷惑をかけてしまうようなら話は別ですが、どんな苦悩でも苦痛でもそれが私一人で引き受けられるものなら、私は、歯を食いしばって、意地でも、石に噛り付いてでも、

 

“死ぬ気で生きていたい” 。

 

入院患者、外来患者、見舞い客、缶飲料の箱を運ぶ業者、どっかの営業担当の方(多分)、看護師、医師、様々な人が行き交うロビーで、しばし立ち尽くし、そんなことを考えてしまいました。

 

暗い話で、申し訳ありません。

 

そして、余裕で臨んだはずの初検診。
お相手は、例の作戦参謀、もとい、担当医。

『西武ドーム行ったの?』
「諦めました」
『賢明、賢明』

最近ライオンズが強いからか機嫌がいい。

ところが、

『刺激のあるもの飲んだり食べたりしてるでしょ』
「え?え~と、、、いいえ」
『アイスとか、炭酸飲料とか、チョコレートとか、まさかアルコール飲んでないよね』
「いいえ、まったく」
『おかしいな~~~、ホントのこと言ってくれないとこっちも判断しようがないな』
「・・・すみません」
『おっ!』
「酒はもちろんやめました、でも、アイスとコーラを、、、」
『やっぱりね』
「なにかマズいことにでもなってるんですか?」
『いいや、ちょっと聞いてみただけ』

・・・。

えーーー!カマかけられた?まんまと乗せられた?

なんちゅう医者だ。

『アイスくらいはいいですけど、今しばらく刺激を受けるようなものはガマンしてください。』
「はい!!!」

 

作戦参謀、恐るべし。
さすが “G消滅作戦” の指揮を取っていただけのことはある。

 

その後も、色々注意され、釘を刺され(子供か?!)、やっと開放されてロビーに向かうと、なんと姪っ子(高2)が椅子に座って辺りをキョロキョロ見回している。

 

怪しい、何しに来たんだ?

 

トイレの入り口に隠れ様子をうかがっていると、どこかに電話を。
同時に私のケイタイが。

 

私を探していただけでした。

 

「お前、何してんの?」
『昨日じいちゃんが今日は “おっちゃん” 病院だって言ってたから』
「だから、何してんのって」
『車乗っけてって、もう暑くてムリ』
「はぁ~~~、お前バカ?塾が何処か知らんけどここまで来るならウチに着いちゃうだろ」
『あっちは上り、こっちは下り、全然楽!』
「自転車どうすんだよ」
『置いてく』
「明日は?明日のが暑いんだぞ」
『“おっちゃん” 、塾まで送って』
「えーーー!やだよ、ママに頼め」
『ママ早くに仕事行っちゃうから』
「じゃあオレがやった手伝い賃でなんかおごれ」
『“おっちゃん” の部屋の冷蔵庫のお菓子全部食べていいから』
「さっき、注意されたばっかだよ」
『それよりさ、○○駅んとこにあるセブン寄って』
「セブンなんかそこにあるじゃんか」
『ダメ、○○駅じゃないとダメ』
「遠いよ」
『いいから』

というわけで、帰り、随分離れたところにあるセブンイレブンまで寄り道させられました。

 

目的はこれでした。

少し前からセブンイレブンでロッテのお菓子を買うと「ももいろクローバーZ」のクリアファイルやトレーディングカードが貰えるキャンペーンをやっていたそうで、寄り道したセブンイレブンにはまだそれらが残っているので、“救出した” のだそうです。

 

「残ってるのよくわかったな」
『電話で聞いたもん』
「ひょっとしてさぁ、お前、この辺一体のセブンに全部電話してない?」
『した』
「あっ!!!オレの冷蔵庫の中のお菓子、これか!」
『そーだよ』
「・・・・・」
『だってさ、初日に4時起きして○○んちのセブン(経営者が元同級生の父親)行ったらまだ出してなくて、バイトの人が知らないって言ったんだよ』
「4時、、、」
『おじさん来るまで待って、出してもらったよ』
「なにもそんな早く行かなくても」
『終わっちゃったら大変だし』
「でもいまだに残ってんじゃん」
ももクロもまだまだだ』
「田舎だからな、、、」

 

どうやら明日は朝、姪っ子を塾まで送り、その後隣の家の軽トラを借りて迎えに行き、アイツと自転車を回収してこなくてはならないようです。

 

いよいよ平穏な日々が崩れ始めました。
眩しいほどに今を生きている彼女のせいで。

 

『あっ!“おっちゃん” 、○○さん(行き付けのCDショップの店員さん)がミューズのアルバム、10月んなったって言ってたよ』

 

え?9月にリリースされるはずだったのに、、、発売延期?なんで?

 

『知らない、、、』