鉛の風船

ロックです ジャズです ぼんくらなおっさんです

そりゃあ町は大騒ぎさ!

今日、近所でちょっとした騒ぎがありました。

少し離れた、ある農家のお宅の物置というか倉庫というか、収穫した野菜を一時的に保管しておく小屋ですね、その中に何かがいると。

 

協力要請を受け(めんどくさい)一応駆けつけてみると、網やら棒やら板やらを手にした人々が小屋を遠巻きにしながら途方に暮れていました。

話を聞くと午後、山積みにされた野菜や農機具に隠れて何かがいるのに気付いたそうです。
ガサゴソ動く音にはかなりの重量感があり、間違ってもネズミではない。
もしイノシシだったら野菜がメチャクチャにされる、かといってヘタに手を出すと人間が襲われる。

で、どうしよう、の状況になったそうです。

イノシシは猛獣並みに獰猛です。

扉に耳を付けて中の音を聞いてみると確かに何かが動いている音がします。

 

「みんなして隠れて、開けっ放しにしとけば勝手に逃げてくんじゃね」
『バカか、シシだったらそこらにすっ飛んでって誰がやられるかわかんねんだぞ』
「ホントにシシか?鼻息聞こえないぞ」(イノシシは鼻息が荒いので結構離れていてもわかる)
『警戒してんだろ、おめえ素人なんだから引っ込んでろ』
「はぁぁぁぁ!来いって言うから、」
『役所に電話したから少し待ってろ』
「役所!今日休みじゃないの?」
『緊急だかんな』
「檻仕掛けたり、(山の中に)鉄砲ぶちに行くんじゃねんだぞ、そこにいるんだから連中来たってやるこた同じだろ」
『いいから、おめえ用ねえんなら帰れ』

 

く、じじいめ、呼ばれたから一応来てやったのに。
今あるのは収穫が始まったばかりのレタスかな?みんな食われるぞ。

 

時折、ドタンッガコッなどといった音が漏れ聞こえてくる。
その度に、小屋の持ち主のじいさん涙目。

 

そんなこんなで、じいさんたちと不毛なやり取りをしていると、週末から泊まりに来ていた姪っ子(高3)がいつの間にかやって来ていて、小屋の中の様子をうかがっていました。

 

「おい!よせ、こっち来い」
『イノシシじゃないし』
「そんなん、、、あ゛!お前 “りょう(我が愛猫)” なんか連れてくんな」

“りょう” を抱きかかえて来ていました。

『タヌキだよ、そんなら “りょう” のが強い』
「まだなんだかわかんないの!」
『タヌキだし』
「いーから、“りょう” 置いて来い、余計ややこしくなる」
『ほら、“りょう” やる気満々、イノシシならビビッて逃げる』

確かに、“りょう” は姪っ子の腕の中で、うーーーと唸りながら戦闘モードに入っています。

 

じいさんたちに。

 

「シシじゃないって言ってるけど」
『●●(姪っ子)が言うんならそうかな』

 

てめーーー!じじいーーー!私の言うことには “素人は引っ込んでろ” でアイツの言うことにはその気になるのか。
どんだけアイツの外面のよさに毒されてるんだ。

じいさんたち、、、どうする?タヌキならどうってことねえ、そう言えば鼻息荒くねーな、役人来るの待ってもおんなじだしな、とかやってる。

 

それ、さっき全部私が言ったことですけど。。。

 

そうこうしていると、小屋の裏手からドンッ!と壁を思いっきり叩いたと思われる心臓が縮まるほどの大きな音が。
何事だとみんな固まっている中、それは2回3回と続き、

 

『見えた!シシじゃない!イタチのでっかいのみたくなヤツ』

 

と、姪っ子の絶叫が。

 

そして、言うが早いか、裏手から駆け出してきて、小屋の扉を開け放ちました。

 

突然のことにみんながみんな腰を抜かしそうな中、小屋から飛び出して来たのは、イタチを大きくしたようなカワウソちっくな動物。

 

物凄い勢いでそれを追ってく “りょう” 。

 

一瞬でしたけど、眉間の白いラインを見逃しませんでした、間違いなくハクビシン
彼らは夜行性なので、夜の内に忍び込み、何らかの理由で帰り損ねてそのまま潜んでいたようです。
ハクビシンならとりあえず放っておけばいい、人に危害を加えるようなことはまずないでしょうから。

ただ、“りょう” が彗星のごとく追って行ったので、ハクちゃん、少しひっかかれるかも。

 

得意げな顔で戻って来た姪っ子が。

 

『じいちゃん、裏の板に穴開いてるよ』
「おっ、おお、、、そうか、ありがとありがと、お茶にすっかお茶に、もう、時間も時間だな、みんな一杯やってくれ、悪かったな」

 

この大騒ぎじじいの家にお邪魔し、お茶をいただきながら姪っ子に。

 

「お前さ、もしイノシシだったらどうすんだ、ムチャクチャやめろ」
『ん?みんな変だし』
「は?」
『畑にあんなにおいしいのあるのに、わざわざ人間とこなんか来ない、タヌキとか弱いのがイノシシにビビッて来るだけ』
「そんなんわかんねえだろ」
『わかる!!だから “りょう” 連れてきた』

 

はぁ~、なんだ、この野生児っぷり、いつも言うけどだからモテないんだ!

そして、じじいたち。

 

『●●(姪っ子)はすげえな、○○(私)と全然違うな』

うるせえ、親子じゃないんだから当たり前。

『えらいえらい、今ヤモ(ヤマメ)焼いてるから食ってけ』

ふん、自分で遊びで釣ってきたヤツじゃんか。

『アイスもあんぞ』

それ、それそれ、姪っ子が「ももクロ」のキャンペーン絡みでごっそり買ってきて冷凍庫に入りきらないので、この前私がおすそ分けしたヤツだろ。

 

姪っ子、ニッコニコで英雄気取り。

 

ねえ、じいさんたち、いや、いっそ、じじいども、私が最初に言ったよね、シシじゃなさげだって、扉明けときゃ逃げてくって、役人なんか呼んだって無駄だって、、、ん?

 

みんな日曜なので本気モードで飲みだしてるけど。

 

あのーーー、役所の人はどうしたの?

 

ま、いっか、、、、、。

 

今日、午後のどうでもいいお話でした。

 

夜ウチに帰ると、すでに “りょう” は戻っていて、満足げに寝ていました。
体をざっとチェックしてみましたが、逆襲を受けたような傷はないもよう。
よかった。
お前も年なんだから、アイツに付き合ってムリするな。