鉛の風船

ロックです ジャズです ぼんくらなおっさんです

50間近の手習い決定

『ピアノ教室やってるよ、だから辞めたんでしょ』

 

今日(日付では昨日)、“りょう(愛猫)” の爪が深々と突き刺さり腫れて膿んでしまった右手中指の先に、地獄のような治療を受けてきて、“もう二度と近寄らないリスト” の上位に某皮膚科をアップし、息を吹きかけただけでもズンッと痛い、こりゃ仕事大変だ、などと考えながら、その加害者とソファでマッタリしているところに、妹が尋ねて来ました。

 

先日、姪っ子(高2)が「ももいろクローバーZ」の企画に反応し学校の先生方を騒がせた一件で、それに乗じて彼女が通う高校の音楽教師である懐かしくも忘れ得ない女性へのコンタクトを試みてみたものの、すでに退職していたという見えない壁に阻まれ、敢え無く玉砕。
長年勤めた女性教師の退職、イコール、結婚、、、でも一応、本当のところは知っておきたい、そんな未練たらたらな重ーい空気が充満している私の部屋にアイツが、天敵が、妹が顔を出したのです。

 

今の今まで、寝そべる私の腹とソファの背に挟まれて夢心地だった “りょう” が、ひょこっと目を覚まし、欠伸も伸びも忙しく私の体を飛び越え、妹の足元にスリスリ、、、裏切り者め!

 

そして天敵は、ニヤニヤしながら。

 

『○○ちゃんとっくに先生辞めてるよ』
「・・・何の話?」
『みんな聞いた!』

 

この○○ちゃんというのが、忘れ得ない元女性教師です。愛しのメガネちゃん。
クソーーー、姪っ子、余計なことすんなって、あれほど言っておいたのに。

 

『“おにい(コイツは中学頃から私のことをこう呼ぶ、ちゃん が欠落してる)”、○○ちゃんそんな知ってたっけ』
「バンドやってたり、」
『あーーーっ!やってたね』

 

私が高校の頃、妹は中学生、その同じ運動系の部に在籍していたのが、メガネちゃん。
母親の言い付けで、運動も一生懸命やらされていたが、本職は物心付いたころから生活の一部となっていたピアノ。
中1で、ピアノだけで、「ゼップ」の「天国への階段」をフルで弾きこなしてしまうほどのとんでもないセンスと技術を持っていた子。

そして何より、顔に合わない大きなめなメガネをかけ、いつもニヒニヒ笑っていながら、いざ鍵盤を前にするとちっさくて片手で持ち上げられそうな彼女がどんどん大きくなり、音を外すギターに、モタるベースに、ひたすらうるさいノリの欠片もないドラム(私)に、がんがんダメを出してくる。
そこに惚れた!ヘタクソな高校生ロックバンドな私たちは彼女をキーボーディストとして引き入れ、それなりの動員(十数人、すべて彼女目当て)を得たのです。

 

『随分前に家族で引越したの知ってる?』
「ああ、ハガキ来てた」
『そんでお金ためて、ピアノ教室始めたんだよ』
「教師辞めてまで?」
『んまったく!さんざ楽器屋勤めててわかんねーか?』
「へ?」
『ピアノで音大出て、それ一本で食えなきゃ、一時は教員なんかに腰掛けても、最終的には教室やって後進を指導したいって思うんだよ、陸上とか体操の選手だって多分そう、自分が多くを犠牲にして身に付けてきたことを次に伝えて、つないでいってほしいって思うんだよ!』
「・・・・・」

 

何コイツ。
そんな熱くなるな。

○○君(義弟)と何かあった???

 

「あのさ、とりあえずオレが知りたいのはその辺じゃなくてさ、」
『バカじゃないの、○○ちゃんだってもう40過ぎてんだよ、おばさんだよ』
「知ってるよ、5年前くらいに会ったんだよね、相変わらず綺麗だったよ」
『え?そんな最近会ったの?げへへへへ、中学生の彼女を見てるんかと思った、、、』
「ふざけんな!バカか!それじゃ完全に犯罪者じゃんか」
『でも高校んときからずっと年上好きとか言ってたよね、、、ロリをカモフラしてたんだ!』
「ロリゆーな、ガキに興味はねー」
『でも、最近ももクロに必死だし』
「必死じゃないの、楽しんでんの」
『ふーん、何でもいいけど、あの子(姪っ子)来年3年だかんね』
「わかってるよ、でも来年ももクロもっと凄そうだぞ」
『だから上手いこと制御して』
「オレに出来っこないだろ」
『いつもつるんでるくせにそういうとこ逃げるんだ』
「そーじゃないけど」
『まっ、いいや、それよりさ、ももクロに凝る前のさ、リンキンパークとか色々のゴチャゴチャが部屋一つ潰してるんだけどなんとかして』
「え?べつにそのまんまでいいじゃん」
『はぁぁぁぁぁ~~~、彼の両親がいよいよ同居したいんだって』
「マジか?いまさら?」
『自分とこに孫が全然来ないのが我慢できなくなったんじゃないの?』
「そうか?ご愁傷さま」

 

で、私は、妹からメガネちゃんの情報を仕入れ、さあ、これをどう使おうか、
絶対にストーカーちっくには思われないよう、どう、接近しようか、
などと思案に暮れ、、、、

 

って、その前に、ど・く・し・ん、なの?

 

『未婚だよ、結婚してればあたしに招待状か挨拶状来ると思うし』

 

ほんと!!!!!?
うんうん、そうかそうか、お前も極稀にはいい妹じゃないか!

 

さあ、この後どうすっか?

 

妹曰く。

『少しはピアノ弾けんだから、○○ちゃんの教室に入会しちゃえば?おっさんも結構来てるみたいよ』

 

おお!その手があったか。

 

メガネちゃんにピアノを教わる?え?手取り足取り?いやいや、ピアノだからとりあえずは指使いだ。
でも、今中指膿んでるし。
ソッコー治さなくては。

 

ふっ、、、生徒のおっさん逹め、趣味や定年後の手習いくらいでオレにかなうと思うな。

何年音楽に携わってきたと思ってんだ、“えー、すごーい、いきなりそんなに弾けちゃうんだ” な先生の視線はオレのもの、ケッテーーー!落ち込むな、羨むな、冷静さを失うな、地位を利用して闇の刺客を雇うな、、、仲良くやろうね。。。

 

『子供のほうがたくさんいるだろうから、ちゃんと並んで順番待ってね』
「うるさい」
『泣かすなよ』

 

さっ、エレピを引っ張り出して、運指だけでもチェックしとかないと。

 

ルン、ルンルンルルン ♪、おっと、リン、リンリンリリン ♪