それ滅びなむ
また、一つの種が滅びようとしています。
“カッコソウ” です。
[桐生市Webサイトより]
見た目は、どう見ても “サクラソウ” ですが、なんと世界中で我が群馬県の “鳴神山” だけに自生する環境省の国内希少野生動植物種指定の野草、サクラソウ科の多年草です。
生粋の日本固有種で、氷河期を生き抜いたいわば生きた化石。
オランダのライデン植物園に「シーボルト」が送った標本が保存されているそうです。
そんな希少な植物が環境省の最新の調査によると、もう800固体しかないそうです。
草が、800!少なっ!
鳴神山というのは標高の低い、どうということもない山で、これほど希少なカッコソウも少し登れば容易に見ることができます。
私も、見に行ったことがあります。
別に、入山料もいりませんし、怖そうなおじさんが花を見張っているわけでもありません。
当然、柵で囲われていたりなんかもしません。
市民には馴染みのお手軽なハイキング・ルート、ただの歩きやすい山道の脇に普通に自生しているのです。
カッコソウの最初の試練は、たぶん、戦中戦後から高度経済成長時代に森が大規模な伐採を受け、その跡に植えられたスギ、ヒノキによる環境の変化です。
そして、止めを刺したのが、何年か前の “山野草ブーム” 。
実は、私を含めて多くの人がカッコソウなんて知らなかったんです。
だってあんな野草、ほとんどサクラソウだし、山道を歩いていたって気にも留めていませんでしたから。
山野草ブームで、目ざといヤツらによる若干の盗掘があり、それを地元ローカル紙が大々的に報じてしまったから、さあ!大変!
カッコソウって何だ?そんな希少な植物があんな山にあったのか、あのサクラソウか?へーすげえ、“にわか” なヤツらにも火を点けてしまい、あっという間に盗掘されまくり、その数を激減させたのです。
これはマズい、と地元有志による保護活動が細々と行われてきましたが、山野草ブームを過ぎても状況はほとんど改善されず、いよいよヤバいと、つい最近、国まで動き、保護に乗り出すこととなったのでした。
特殊切手の発行や、シンポジウムなど、相変わらず自己満足っぽい内容ばかりではありますが、それでもやらないよりはまし、、、と、思いたい。
切手を登山口で売ったりもしていたので、一応、買って来ました。
1979年の有志による調査では、個体数は約8,000、すでに野草としては恐るべき少なさですが、それから約30年強で、十分の一にまで減ったわけです。
私は、基本的に自然の変化の中でその役割を終え絶滅していく生き物を無理に救う必要はないと考えています。
大げさに言えば、それが自然の、地球の意思なのでしょうから。
でも、恐らく今の地球上でそのように絶滅していく生き物はまずいない気がします。
多かれ少なかれ、ほぼ100%人間が関わっている。
鳴神山のカッコソウなんて、モロそう。
昔から地元民に愛された山、そこに登る多くの人々は、ひっそりと咲く見慣れたサクラソウ似の野草なんて気にも留めて来なかった、小さな野草は人の目を引くような極端に美しい容姿を纏うこともなくひっそりと地味に長い年月を生き抜いてきた。
それぞれが別のほうを向いて、一切関わることなく均衡を保ってきたはずなのに。
日本がまだ大陸とくっ付いていた頃から生きてきたそうですが、その途方もない年月すら一瞬で破壊してしまう人間のインパクトは凄過ぎる。
この手の保護活動が大好きな知人に、保護活動への協力を求められ、積極的には無理だが、出来る限りの支援はする、と回答し、まずは切手を買いましたが、怒られることを承知で書きます。
今のままの活動では、早晩きっと彼らは滅びます。
そもそも、日本中のいたるところに咲いていた彼らが、どんどん減少し、かろうじて鳴神山に残った、という話ではないのです。
初めからこの山でしか確認されていないのです。
ということは、大昔、この山にだけカッコソウを育む奇跡の環境が整っていた、ということです。
大規模伐採に遭おうが、スギの登場に自生地を追われようが、氷河期以前から生き残ってきたその生命力で、なんとか踏ん張ってきたのです。
でも、野草です、草です、それが800固体って、、、。
山丸ごと以前の環境に戻すくらいのことをし、周辺住民がそれに共なうコストとリスクを負う覚悟がなければ無理だと思います。
現時点では希少なだけで、貴重ではないのですから。
嫌な話ですが、その存在が、金を生むことはないのですから。
そういえば、鳴神山では “ツキノワグマ” の保護活動が展開されています。
でも、その裏側の地域では、彼らが現れるたびに、駆除騒ぎになります。
あのぉ~、天秤に乗せる分銅、錆びてないよね。
“それ滅びなむ” 、次はどの種の番だ、、、。
カッケーーー!!!京都駅メチャクチャ!
天地否、それ滅びなん。。。