鉛の風船

ロックです ジャズです ぼんくらなおっさんです

A Farewell to Metal Gods

 

ジューダス・プリースト

 

私をぼんくらなおっさんに仕立て上げた数々のピースの中の一つであり、そして今なお存在し続ける人生の縦軸の一本。
その一本の縦軸が、ついに想い出に変わる日が訪れたようです。

 

「JUDAS PRIEST Epitaph Japan Tour 2012 at 日本武道館」、行ってきました。

 

前回の来日公演のロブの姿になんだか哀れみすら覚えてしまい、今回は「K.K.」もいないことだし正直パスかな、と思っていたのですが、ここまで長年付き合ってきたんだし、やっぱり最後も見ておくべきと思い直し、チケットを入手しました。

ほとんど期待せずに行ったんですが、予想に反して、かなりよかったです。
これが最後だというこちらの先入観もあったのかもしれませんが、全員かなり気合が入っていて、コンディションもいいように見えました。

 

これはやはりロブの声がよく出ていたというのが大きかったと思います。
よく声の衰えを指摘されますが、年齢を考えればそんなの当たり前。
彼の声のピークは「Defenders of the Faith」の頃。
あの「Painkiller」でさえ、もう全盛期のロブではなかった。
あれからもう20年以上も経っているのだから天を突くようなハイトーンなど望むほうが無理。

それでも高域から低域までよく出ていたし、喉仏に絡みつくような図太くなった声もあいまって、やっぱり凄いと唸らざるを得ない圧倒的な歌唱力でした。
若い頃より今のほうが迫力があっていいんじゃないかとさえ思ってしまうほど。

 

「ジューダス」のライブは多分過去4回ほど行っているはずですが(“HALFORD” は行けなかった)、ロブがまともに歌えていた記憶がまるでない。
初来日公演が最初だったのですが、あまり声が出ていなくて、線も細いし、とにかく迫力が感じられなかった。
同時期にハマって、これよりちょっと前に見た「スコーピオンズ」の「クラウス」があまりにも衝撃的だったため、まだライブ経験の少なかった私にとって、この二人の対比は今に至るまでトラウマのごとく残っています。
さらに2度目の来日公演。これはもう言わずもがな。最悪。でも事情は有名。
その後もお世辞にもいいとは言えない状況が続き、派手なパフォーマンスのわりに、実は本番ではあまり歌えない、というのが私の中でのイメージとして定着していました。

声に限って言えば、どうしても、なんというか、女性的なか弱さ、ガラスのような儚さ、を感じてしまっていた。
メタルなのに。

それが、年を食ってスッと声が出なくなった分、肺からしぼり出しながら喉の奥のほうで歌っているような感じになり、怖いような迫力が出てきた。
あまり動けなくなった姿もかえってどっしりとして見え、貫禄十分。
まさに仁王立ち。
地に額をつけ、崇め奉るしかないような雰囲気。

 

最後の最後に来て、ロブの空恐ろしいほどの底力を見せ付けられました。
スゲーぜ!ロブ!!!

 

そして、演奏陣。
これはもう、いつも言うことなし。
安定のハイレベル。

 

スコットは、見るたび聴くたび重さと聴かせる上手さが増しています。
こういうツーバス高速連打系のドラマーは、

ベードラにばかり気を取られるせいかフレーズがつまらない” 、
“ともすれば曲をぶち壊さんばかりに踏みまくる” 、
“スネアやタムでやったほうが絶対カッコイイのにわざわざベードラでやる” 、
“ハットやトップ、スネアがキマってない、ただ刻んでるだけ、置いてるだけにしか聴こえない” 、
“とにかく前のめりで軽い” 、
“やたら走る” 、

こんな感じの人が多いためあまり好きではないのですが、彼は、考えられた効果的なフレーズとしっかりとしたタメ、粒立ちのよさ、そして群を抜くリズムキープ力を持っており、この手のドラマーの中では稀有な存在だと思っています。

Painkiller」の頃は、「こーーーんなに踏めちゃうオレってスゲーだろ」なヤンチャさも垣間見え、首をかしげる部分も少なからずあったのですが(それでも重さは持っていた)、今や抜群の安定感で「ジューダス」を支える土台、いや、屋台骨であり、明らかにバンドを引っ張る存在にまでなっています。

愛すべきじっちゃんたちとサポートの若きギタリストをまとめていたのは間違いなく彼です。
意外とシンバル・ワークが好き。

 

イアンは、ホント全然変わらない。
その、よくわからない、つかみどころのないプレイや、足をガッと開いて立ち、時折ネックを前方に突き出すしぐさなど、遠目で見る限り一番変わってないのは彼。

ただプレイに関しては「デイブ・ホランド」がドラマーだった頃が一番よかったですね。
デイブのシンプルかつ要所を押さえたドラミングに彼のプレイがよく合っていた(“デイブ・ホランド” 好きでした)。
デイブが加わってメタルを前面に押し出すようになってから彼のプレイはどんどんシンプルになり、いぶし銀のごとき雰囲気をかもすようになっていきました。

それがスコットの加入で一変します。
デイブとはまったく違うタイプのツーバス高速連打の血気盛んな若きドラマー。
こういうドラマーと一緒にやってノリを作り出していくのは大変だったと思います。
“よくわからない” “つかみどころがない” プレイに変わっていったのは、彼なりに色々考えた結果だったのではないでしょうか。

それでも、結成時から「ジューダス」を支えてきた威厳は少しも衰えることはなく、フロント3人の少し後ろでベースを弾く姿はまさしく職人、その半生を、決して順風満帆とは言えなかったバンドにひたすらささげ続けてきた筋金入りの職人です。

かなうことなら一度酒を飲みながらじっくり語り合ってみたいおっさんですね。
この人に結成時から今に至る諸々を語らせて本にでもすれば相当面白そうです。
バンドのことだけでなく、色々と人間関係のあやも聞けそうですよ。息子は「ロブ」の甥っ子だし。でもその母親は今の奥さんではない。しかもロブは。。。どうです、出版社さん。聞き手はもちろん「セーソク」氏で。

 

グレン、、、。
実は私の中での「ジューダス」は、この人「グレン・ティプトン」と限りなくイコールなのです。
極論ですが、彼がギターを弾いてさえいれば、私にとってそれは「ジューダス」なのです。
もちろん、他のメンバーもいてこその「ジューダス」ですし、「ロブ」が抜けたときも、「K.K.」が抜けたと知ったときも不安はありました。
それでも彼さえいれば、彼が安心してギターを弾ける環境が整ってさえいれば、なんとか「ジューダス」として成立すると思っていますし、「ジューダス」の “音” になると信じています。
あくまで、“私の中では” ですよ、“極論” ですよ。
だから多くのファンから見放された「リッパー」時代も大好きでした。
むしろもっと続けて欲しかったくらい。
「Jugulator」「Demolition」どちらも素晴らしい。とんでもない緊張感!
いつ聴いてもヒリヒリします、ゾクゾクします、頭の血管切れそうです。

 

あっ!仕事しなくちゃ。
今日はここまで。
続きはまた。

 

リッパー!かっけぇぇぇぇぇっ!!!
浮いてるけど。。。